入出力に制約を有するシステムの解析と制御 |
制御系の解析・設計において,制御対象が線形システムであると仮定して, 制御系の解析やコントローラの設計を行なう場合が多い. しかしながら,現実のシステムにおいては,ハードウェアの仕様や安全の確保 のために,制御入力,センサー観測値やプラント出力に対して 様々な制約条件が存在する. これらの制約条件があるために制御対象は非線形な動特性を有し, 制約条件を考慮しない線形制御では,閉ループ系の安定性を保証できなかったり, 十分な制御性能を達成することができなくなる. したがって,本研究では,入出力信号に対する制約条件を陽に考慮した, フィードバック制御系の解析と設計に関する研究を行なっている.

主な研究トピック
- Anti-Windup 制御系設計
入力飽和(リミッタ)を無視して設計された補償器Kに対して, 付加的な Anti-Windup 補償器Γを付加することにより, 入力飽和による過渡特性および安定性の劣化を防止する手法.
- 入力飽和を有するシステムの局所安定性解析および局所安定化
不安定なプラントに対しては入力飽和の下で大域的に安定化できないことが知られているため, 局所安定性および局所安定化が本質的である. 本研究では,このようなシステムに対して,できるだけ大きな安定領域と良好な制御性能を保証する 解析・設計手法について研究している. - 制約を有するシステムに対する目標値整形(リファレンスガバナ)
リファレンスガバナ(reference governor)は,ある数値最適化を行なうことにより, 入出力に関する制約条件を満たしかつ良好な過渡応答を実現するように目標値信号を整形する機構である.
【このテーマにおける研究業績】
"Swing-up control of an inverted pendulum with limited pivot travel," Proc. of ICROS-SICE International Joint Conference 2009 (ICCAS-SICE2009), pp. 3061-3065, 2009. (jointly authored with R.Tatsumi)
アーム可動範囲に制約のある倒立振子の振上げ制御手法を提案しました(現在,実験装置は当研究室にありません).
Anti-Windup 制御
"Youlaパラメトリゼーションに基づくAnti-Windup制御系の解析と設計,"
計測自動制御学会論文集, vol. 38, no. 10, pp. 868-875, 2002.
提案手法をDCサーボモータの位置制御に
適用した実験のムービーです.
Anti-windup 補償器(AWC)を付加することにより,
入力電圧の飽和の下でも
オーバーシュート無く速やかに目標位置に制御できています.(現在,実験装置は当研究室にありません)
飽和システムの局所安定解析・局所安定化
"An approach to local stabilization of linear systems with actuator amplitude
and rate saturations,"
計測自動制御学会論文集, vol. 39, no. 11, pp.1029-1038, 2003. (共著者:仲田勇人)
リファレンスガバナ
非線形システムに対する出力フィードバック型リファレンスガバナの設計,
計測自動制御学会論文集,
vol. 41, no. 10, pp. 803-812, 2005 (共著者:畑中健志)
"リファレンスガバナと予見制御の統合設計," システム制御情報学会論文誌, vol.18, no.1, pp.39-41, 2005. (共著者:畑中健志)